9 フライフィッシングのクラス 

                                                            

語学学校の学生のほとんどはアジアの人達である。言葉もろくに話せずにアメリカにやってくるのは暇と金のある人間にしか出来ないのであろうか。いやそうではない、ヨーロッパの人達はEnglishSpeakingを苦にしないのだ。

  アジア人の英語ではなく、ネイティブの英語に接する事が出来、学生たちと一緒に授業に参加できる機会はないかと捜していたら、見つかった。バスケットボールとフライフィッシングの授業である。バスケットボールの授業は将来バスケットボールを指導したいという希望の学生を対象に、男子チームのアシスタントコーチが講師として指導をする。黒板やVCR(VTRをアメリカではこう呼ぶ)を使った座学である。英語に慣れるのにも最適と思い、聴講生として参加させてもらった。

ここオレゴンはフライフィッシングのメッカだそうだ。フライフィッシングは、知的でかつ動的な文化スポーツと考えられている。だから日本人が好む餌釣りは冷視されるそうだ。魚の習性、餌となる虫のライフサイクル、道具の選択、川・湖などの状況の把握、フライの制作など論理的・科学的な授業内容が組まれている。講師はといえば、市内の釣り具屋の店主である。履修していた約30人の学生のうち、2/5は女子学生であった。

屋外の実技を期待していたが、それはほとんどなく、芝生の上でロッドを動かしてのキャスティングを1度やっただけである。残るすべての授業は机について、黒板やスライド、VCRなどを利用した講義形式であった。フライフィッシングの授業に単位を出すというのはアメリカらしくて良いではないか。対する学生たちの姿勢はといえば、頗る真面目で、熱心にメモを取り、板書し受講していた。私は時折出現する単語を頼りにguessすることしか出来ず、中身を十分理解する事は出来なかった。しかし20歳前後の学生たちと一緒に受講出来たのは実に良い経験であった。特に、キャスティングの回、ファッションモデルのような長身の美しい女子学生が私を同じグループに誘ってくれたのはトキメキものであった。

余談になるが、授業中にガムを噛む、ジュースを飲む、果物を食べるなどは公然となされている。多数ではないが毎回決まって、数人が行っていた。しかし、音を立てる事はなく、静かに整然と食べたり飲んだりしている。授業中に寝ている者など一人もいなかった。自由の中にも節度が保たれていることに感心した。

 

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