7 櫛とバリカン    

2ヶ月も伸ばし続けていた髪に、とうとう我慢しきれなくなり 、初めて床屋に向かう。日本でもお馴染みの赤、青、白の広告塔が回っている。大都会のbarberと違い、ここのbarberは狭くて古い。しかしその分だけ料金も安い。Hair cutだけ(shampoorazorは別料金)で9$〜11$が相場のようだ。

椅子に座る。相手に先にしゃべられるとややこしい、こちらから先に言ってしまおう。“not to cut too short”と言って前髪を摘み上げた。しかし、これだけではすまなかった。横はどうするか、後ろはどうするかと聞いてくる。横は耳の上を指して何か言っているので想像がつく。後ろは“taper or line?”ときた。Imageするのに時間が必要だ。分からないながらもlineにかけた。

 こちらが英語に苦労していても、なかなかゆっくりとはしゃべってくれない。“please speak slowly”とでも言わない限り、いつもの自分の速さでどんどんしゃべり続ける。「慮る」という繊細さは期待する方が無理なのだ。40歳半ばと思われる気丈そうな女の理髪師は、面倒くさそうに仕事にかかった、左手に櫛、右手にバリカンを持って。櫛とバリカンが協働出来るなど日本では想像もしなかった。櫛には鋏が付き物なのだ。しかし、手際は見事である。鋏を使ったのはほんの一瞬だった。ほとんどすべての作業を櫛とバリカンでやってのけた。出来上がりはといえば、そうそう満足できるものでは無かったが、値段と時間(15分)を思えば贅沢は言うまい。「切った髪が汚くて嫌だな」と思っていたところ、ドライヤーのようなものが出てきた。しかし、それは風を吹き付けるものではなく、吸い込むものつまり掃除機(バキューム)であった。首の周りから頭のてっぺんまで、くまなくでもないが一応きれいに吸い取ってくれた。11$を支払い“Thank you”と言って立ち去った。

 

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