少年スポーツにおける7つの心得                                                                          

                                                             Last Update 98/1/15

この内容はJFAJapan Football Association)ニュースNo.122に掲載されたもので、ノルウェーのサッカー協会が作成したものを日本語に翻訳したものをベースにK.WINGSさんがニフティサーブ内のサッカーフォーラムでの発言を再構成したものとなっております。しかし、サッカーに限らず、バスケットなどの他のスポーツにおいても同様にも役にたつような内容になっていると思います。

 

1.子供のスポーツは「遊び」であり、それは「楽しく」なくてはなりません。

  子供達が接するスポーツは、どの様なものであれハードワーク(つらいもの)ではなく遊び(楽しいもの)である事を忘れてはいけません。そして、それが彼らの生活の一部になるように、試合の結果ではなく、子供達が友達と一緒にプレーを楽しむ姿に満足するようにしましょう。

 この「子供にとっての遊び」「楽しさ」を我々はどう考えれば良いのでしょうか?

 ほとんどの指導者は、「楽しくスポーツを!」「遊びの延長線上にスポーツがある」「ボールと遊び、親しむように」という考え方を「低学年」のうちは採用しているように思えます。

 ただ、チームにより、指導者が「楽しみ=試合に勝つこと」という大人流の理論のすり替えをして、子供達に組織スポーツをさせているようなチームも存在しています。

  本当に「勝つこと=子供の楽しみ」なのでしょうか?勝つために練習を始めた瞬間からそれは遊びではなくなり義務として子供達に押しつけられているのではないでしょうか?

 「試合に勝ったら親やコーチが喜ぶ=褒められる=嬉しい=楽しい」という方程式は確かに成り立ちますが、親やコーチが喜ぶからスポーツをするのならば、それはもう遊びではなく義務になってしまうのではないでしょうか?

 スポーツを教えていると、どうしても子供達の活動の自由に対して制約を与えざるを得ません。団体競技ですし、グランドや時間の制約もある中で活動しているのですから、そういった物理的な制約だってあります。しかし、最低限の規律・制約を守らせた中で、自由に遊ばせかつ、それが練習になっているようなメニューを工夫する必要が指導者にはあるのではないでしょうか?

 このような指導をしていると、なかなか試合に勝つことは出来ません。試合には勝てないけど、楽しくスポーツができるように指導者や親が我慢できるか/できないか、がチームとしてどういった方向に進むのかの分かれ目になるのだと思います。

2.子供のスポーツで最も大切な事は、友達と一緒にプレーする事です

 本文では、我々(つまり大人)は昔、公園や近所の芝生で友人と会って、スポーツを楽しんでいたはずであり、それは子供達にとっても同じである、と述べられています。・・・ノルウェーと日本では、まずその前提が完全に違っている(^^;のですが、まぁ、それは置いておきましょう(笑)

さらに、こういった友情がチームスピリットを築いて行くことになるので、クラスメイトや近所の子供達を出来る限り一緒に、同じチームで練習させるべきだ、と結んでおります。

 ・・・当たり前と言ったら当たり前の事なのですが、昨今の日本の子供達の環境を考えると、なかなか額面通りには物事が進まないのかもしれません。

 子供は外部との接触の中で成長して行きます。幼児期の親=家族だけの暖かい環境から、自分とまったく違う他人(=友達)や環境(=学校やスポーツクラブ)に出会い、刺激を受け、考え、悩み、少しずつ大人になって行きます。

 子供の成長過程における友達の果たす役割の大切さは、私などが今更言うまでもない事なのですが、人間は社会的な生き物であるとするならば、社会を最初に体験するのは多分小学校時代の友達なのではないでしょうか?

 最近の子供は友達が少ない、と良く言われます。スポーツや野球等の学校外の活動をしていない子供の場合、学校から帰ると家に閉じこもったきりとなり、誰とも遊ばない子供が多いそうです。他人との接触による刺激を受けずに成長すると社会的な感性が欠如し、陰惨ないじめや犯罪に走る事もあるという事です。

 ・・・我々少年スポーツの指導者がそこまで責任を持てるか! という話も当然ありますが(笑)、少なくとも、今の日本で友達と遊べる場を提供している数少ない環境の一つになっている、という事実は受け入れるべきだと思います。友達同士でプレーし、お互いを尊重し、同じ目的のために皆で協力して共に達成感を得る。そういった経験をたくさんさせてあげなければならないのだと思います。

3.すべての子供に同じ時間プレーさせてあげて下さい!

 本文ではベンチに座っていて上手くなる子供はいないし、また、誰もがプレーしている時が楽しいのだ、と述べております。誰が将来優れた選手になるか解っている人もいないし、少年のスターが大人のスターになることはまれな事であり、地域のチャンピオンシップはそれ自体が目標ではないと言い切っております。

 その上で、試合に勝たせようとこの年代からトップチームを形成するのではなく、誰もが同じ時間プレーし、誰もが先発メンバーになれるようにするべきだと述べております。いろいろなポジションを経験させてあげる事が大切であり、誰もが可能性を秘めているという事をしっかり認識する事が指導者として大切であると結んでおります。

 すべての子供に均等にチャンスを与え、可能性の芽を伸ばしてあげようとすると、この勝ち/負けの問題が必ず出てきます。「あの子が何故出場しないの?」「何故あのポジションなの?」「どうしてあの子が先発なの??」・・・周囲の親からは必ずいろいろな声が聞こえてきます。「普段のポジションなら勝てたのに・・・」とか「今日は○○君がいなかったから負けたんだ」とか「監督(コーチ)は負けるために試合をしているのか!!!!」とか(笑)

 この問題は指導者が勝ち負けにどうこだわるか、を明確にしていないと必ず起こる事なのかもしれません。勝ち負けより子供の可能性を伸ばすことを重点に置いているのだ!と言い切る信念と勇気(^^;がきっと必要なのだと思います。

 

4.子供達に勝ちと負けの両方を学ばせて下さい

 本文では、試合でも練習でも力を均等にするする事が大切である、と述べております。誰も負けたくないし2倍の得点で勝っても面白くないはずで、そういった勝つこと負けることの両方を受け入れることを学ばせるべきだ、と言っております。

 そのためには大人が負けを受け入れることができるかどうかが重要であり、それが出来たならば子供も自然に学ぶ事が出来るはずだ、と述べております。スポーツは誰もが勝ち、そして誰もが負けるスポーツで、勝てば誰もがその勝利を自分のものとして家まで持ち帰り、負ければそれは皆で分け合えばよいのだ、と結んでおります。

 ・・・勝つこと・負けることに対する視点が問題なのですよね。この視点がずれているといろいろ問題が起こるのではないでしょうか(^^;

 先の発言でも述べましたが、少年のスポーツはまず楽しむことが基本にあります。その中でいかに勝ち・負けを学ばせて行くか、その勝敗にこだわる部分と楽しさにこだわる部分のバランスが重要なのだと思います。

 この心得では負けても良いとは決して言っておりません。競技スポーツである以上、勝者と敗者が存在します。全日本少年サッカー大会などは勝者は1チームです(笑)。残りの何千という敗者の上にたった1チームのみ勝者が存在します。競技である以上それはそれで受け入れなければならない事実です。

 ・・・でも、その勝者になることが目的であってはならないのだと思います。試合に臨む時の目標は勝つことであるかもしれませんが、目的を勝つことのみに設定するのは間違っていると私は考えます。

 敗者の上に勝者がおり、誰もが勝ち、誰もが負けるのです。それを勝つことだけを目的に設定してしまうと、負けたらもう何も残りません(^^;

 よく負けた時に子供達をボロクソに叱る指導者がおりますが(^^;、自分の悔しさを子供達相手に憂さ晴らししているようにしか私には見えません(^^;こういったタイプの指導者は勝つことだけにこだわっているのでしょう(^^;。そして彼自身が負けを受け入れることができない(笑)。

 少年スポーツを指導してゆく上での目的はスポーツ大好き人間を育てることだと私は思っております。その中で能力のある子供には将来に続く技術的な基礎をしっかり教え、能力的に劣っている、将来スポーツ選手としては決して大成しない大部分の子供にもスポーツの楽しさを教えて生涯スポーツとして楽しむための基礎を作ってあげる。これが我々に課された義務であり我々が目的 としなければならない事なのではないでしょうか?

 その楽しさ悔しさを教える場が試合であり、勝ち負けであるのだと思います。

 試合の目標は勝つ事である。しかし、目的は勝つ喜びと負ける悔しさの両方を学ばせ、子供達を育てる事である。 By K.WINGS(^^;

 

5.対外試合よりも、クラブでの練習を!

 本文では一般的に子供のスポーツでは試合より練習の方が多くあるべきであり、チームの練習以外に自分で行う練習が極めて大事である、と述べております。そして、試合が多すぎると自主的な練習だけではく、スポーツ以外のスポーツや活動を妨げることになるので、10歳以下の子供達には年間20試合以下、11〜12歳の子供は年間25試合以下にすべきだ、と結んでおります。

 ・・・この項には(多分日本協会の)コメントが付いており、ここで言う試合とは対外試合を指している、という事と、移動時間で子供を拘束するのを極力避け、自分のクラブ、あるいは隣のクラブとの中で楽しく行える工夫をしようという意味だ、という解釈が附記されております。

 年間20〜25試合といったら、月1回、1日2試合のペースですね。

 これが多いと見るか少ないと見るかは各地の協会事情やチーム事情、そして指導者の考え方により千差万別だと思います(^^; 私の住む川崎市の6年生男子の場合、公式戦すべてファイナルまで残ったとしたら、それだけで年間24試合はする事になります。(県大会、全日本は除きます(^^;)区の大会で+8試合はありますし、それに招待大会や交流戦を入れたら・・・・(-_-;ウーン

 公式戦の少ない低学年ではこのペースを守れるかもしれませんが、実体としてはどこのチームも年間最低4〜50試合近くはしているのではないでしょうか?

 まぁ、この心得の主旨が、試合数を少なくしろ!という事ではなく、移動時間を減らして自主的な練習やスポーツ以外の活動の時間が取れるように配慮すべきだ、と

いう所にあるのは理解出来るのですが、いろいろ付き合い(^^;もあるので声をかけられて断り続ける、というのもちょっと辛いものがあります。また、(筋力さんのJビレッジ遠征ではありませんが(^^;)チームの子供達でお出かけするのもそれなりに団結というか仲間意識を持たせるために有効だったりしますので、これまた悩ましい(^^;

 ・・・要は外に出る回数(時間)とホームで練習する回数(時間)とのバランスが問題なのだと思います。で、どの位の比率が適切なのか私も良く解りません(^^;が、多分、7:3(8:2?)位でホームでの練習を重視するのが良いのだと思います。

6.子供のスポーツバラエティに富んだ活動が大切!

 本文では、いろいろなスポーツ経験はサッカーのスキル向上に大いに役立つので、子供達には複数のスポーツ活動に参加するよう勧め、コーディネートしなさい、と述べております。

 また、冬(シーズンオフですね(^^;ノルウェーのお話ですから(笑))においてはサッカーは自発的な活動にまかせ、年間を通しては練習に参加しない子供でもチームの中で、同様にプレーできるように配慮しましょう、と結んでおります。

 トレーニングの5原則というのがありまして、その中でもこれは言われております。(全体性の原則という奴です)小学生年代に限らず、体の発達を考えたらある特定競技ばかりをやるよりも いろいろな競技に参加して体全体をバランス良く使い、発達させるのが理想です。・・・まぁ、理屈では十分に解っているのですが、なかなか実現させるとなると難しいですね。これは(^^;

 ただでさえ短い練習時間の中で、いろいろ教えたい事は山程あり、しかもあせってはいけない、というかんじがらめ状態(^^;で、他のスポーツで遊ばせる余裕なぞあってたまるか!・・・ってのが正直な所かもしれません(笑)。

 サッカー以外に水泳や剣道柔道等の個人競技を掛け持ちでやっている子供は良いのですが、サッカー一筋という子供の方が多いのは多分どこのチームでも同じだと思います。ただ、サッカーの練習にも他のスポーツの要素を取り入れる事は可能ですよね。

 例えば、パス&ムーブの練習にバスケットボールをやらせる、とか、ボディバランスの練習にマットを引っぱり出して床運動をさせたり、平均台を使ったり、とか(^^;。サッカーの場合、下半身にかなり負荷がかかりますので、上半身のバランスを取るためにハンドボールみたいな運動も良いかもしれません(^^;

 

 大人になってボディバランスが極端に悪い選手や、すぐコケる選手(^^;は若い時期にある特定のスポーツ(バスケット、サッカーなど)ばかり(^^;やっていたからかもしれない(笑)。ここら辺は指導者が全身のバランスが取れるような運動要素を持つ練習を意識して組み立ててあげなければいけない所なのでしょう。

 

7.子供にとっての「楽しいスポーツ」に一緒に作りあげていきましょう!

 本文では、子供のスポーツはまたゲームをしたいと思うポジティブな経験でなければらず、その楽しいゲームの中でグループにおける役割や身体面での強化を図っていくべきであると述べております。その中で大人は子供の誰もがスポーツを楽しんでいるかどうかを確認してあげる必要がある、ということです。

 そして最後は指導者は常に手本であることを忘れないでください。子供は”真似の天才”です。そして、それはあなたの言ったことではなくあなたの行いを真似るのですと結ばれております。

 子供にとっての楽しいスポーツというのは、どういう事なのでしょうか?

よく、チームの勝利が絶対(^^;で、チームが勝てば皆楽しいはずだ!チームが勝ったのだから、皆で喜ぼう!とチームが勝つことと個人の楽しみを混同(?)されている方がおられます。

 ・・・確かに、全員でがんばった末に勝利がもたらされる訳ですが、それが必ずしも子供たち個人個人の楽しみになっていない場合があるのを我々は忘れてはいけないのでしょう。

 サッカーの試合には11人、いろいろ交代してもせいぜい15〜6人しか参加できません。控えの子供たちは楽しいのでしょうか?また、試合に出たメンバーにおいても、納得するプレーができず、悔しい思いをしている子供もいるかもしれません。

 試合に出た子供、出なかった子供含めて全員が楽しめたゲームというのはそうそうないのかもしれません。

 目先の勝敗に指導者が一喜一憂して、そういった子供たちの気持ちを勝った=楽しい(はず(^^;)という思い込みで捕らえてしまってはきっといけないのだと思います。子供たち一人ひとり、皆個性がありますし、考え方や感じ方も違います。そういった個人に対する注意や配慮があってはじめて子供たち全員が楽しくサッカーできたとなるのだと思います。

 また、最後に述べられている子供は我々指導者の行いを真似るというのは、常に我々が肝に銘じておかなければならないことなのでしょう。

 指導者がある選手のミスを皆の前で叱り飛ばしたとします。そうしたら子供たちも「そうだ、あれは○○君がいけないんだ!」とその選手を非難するようになるでしょう。指導者が集合や練習の時間に遅れたりすれば、自分達も少しくらいなら遅れても良いんだ、と時間にルーズな子供たちが出てきます。

 指導者が子供たちの見ている前で審判批判を大声でしているようであれば、子供たちは審判への批判はしても良いものだと思うかもしれません。

 指導者=聖人君子である必要はないと思いますが(^^;、子供たちの前ではやはりよき大人でありよき社会人でありよき先輩でありよき親であるべきなのだと思います。

 

おわりに

 「少年スポーツにおける7つの心得」を終わるに当たりまして、JFAニュースに記載されております後書き的な、多分、編集者(=日本協会)が補足している部分について紹介させて頂きます。

 これらの心得はGrass Roots Footballの領域(つまり、草の根スポーツ)であり、これと平行して能力の高い選手のためのプログラムはプログラムで別に用意されている、ということです。

 基本的な考え方として子供達への移動による拘束を極力避けるよう、各地にトレーニングセンターを作り、指導方針が異ならないよう各地域で指導者同士の連絡を密にし、各年代でナショナルチームを作ったときに混乱がないように配慮している、ということです。

 この強化と普及(今回のこの心得はお分かりのように普及の部分ですね(^^;)。この2つの領域にはそれぞれ担当のディレクターがおり、一応分離して考えられてはいるが、結局は同じ目標に向かっている、とのことです。

 トップの強化のためには、まずGrass Rootsから、そしてGrass Rootsである子供達の育成のためには、彼らを指導するボランティアのコーチの育成から一見遠回りに見える地道な努力こそ、結局は一番の近道なのかもしれない、と本文は結んでおります。

 ・・・ノルウェー協会の考え方がそのまま日本協会(というか日本の環境)に通じるか/否か?という話であれば、私はそのまま通じると思います。

 そういった努力を日本協会がしているか?という話になると、ちょっと・・・??(笑)ですが、Grass Rootsを受け持つ我々が、子供達を指導するに当たって意識しなければならないポイントはこのJFAニュースの連載でもそうですが何とか伝えようとしているのだと思います>日本協会(^^;

 あとは現場の我々がどうするか?・・・ということなのだと思います。

謝辞

 以上の文章は、ニフティサーブ内のサッカーフォーラムでの発言を基に再構成したものです。このような形での紹介を許可していただいたK.WINGSさん、トスさんに

感謝いたします。

【引用】nifty:FSMAIN/MES/12/237/少年サッカーにおける7つの心得